「勉強しなさい」と言っても、子どもはなかなか机に向かわない。何度注意しても変わらないと、つい声を荒らげたくなります。
でも、勉強しないのは単に怠けているからでしょうか。
実は、勉強する意味がわからない、やり方がわからない、どこから手をつければいいのかわからない。そんな子どもも少なくありません。
叱る前に確かめたいのは、子どもが何をどこまで勉強していて、どこで困っているのかということです。
東京大学とベネッセの親子調査、国の学力調査を手がかりに、その理由を考えてみましょう。
子どもは昔より勉強しなくなったのか
東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が2026年6月に公表した調査によると、2015年から2025年までの11年間で、子どもの学校外の学習時間は約2割減少しました。
1日平均の減少幅は、小学4〜6年生で17分、中学生で19分、高校生で22分。ここには学校の宿題、自主学習、学習塾の時間が含まれています。
さらに、宿題以外の家庭学習をしない子どもは、小学生から高校生まで、各学校段階で4〜5割を占めています。
これだけ聞くと「今の子どもは勉強しなくなった」と思うかもしれません。しかし、数字には落とし穴があります。
「宿題以外の勉強をしない」と「学校外でまったく勉強しない」は、意味が違うのです。
例えば、学校の宿題を毎日30分していても、それ以外に自主学習をしなければ、前者の「家庭学習0分」に含まれます。
一方、2026年度の全国学力・学習状況調査では、平日に学校の授業以外で勉強を「全くしない」と答えた割合は、小学6年生が5.7%、中学3年生が6.9%でした。こちらは宿題や塾、インターネットを使った学習なども含めた質問です。

つまり、宿題はきちんと終わらせている子も、「宿題以外の家庭学習0分」には含まれます。
親は「宿題しかしない」と不満に思い、子どもは「今日の勉強は終わった」と考えている。そんな食い違いが起きていないでしょうか。
「やる気がない」の裏にある、もう一つの問題
では、勉強に向かわない子どもは、何に困っているのでしょうか。
東京大学とベネッセの「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」には、気になる結果があります。
小学4〜6年生で「勉強しようという気持ちがわかない」と答えた割合は、2016年の32.7%から2025年には54.3%に増えました。
それだけではありません。「上手な勉強のしかたがわからない」という回答も、43.5%から62.2%に増えています。

9年間の増加幅を計算すると、「勉強する気持ちがわかない」は21.6ポイント増、「勉強のしかたがわからない」は18.7ポイント増です。
2025年には、小学4〜6年生の62.2%が「上手な勉強のしかたがわからない」と回答しています。
例えば、算数の問題を前にして手が止まっている子がいたとします。
面倒だからやらないのか。問題の意味がわからないのか。それとも、前の単元でつまずいているのか。
見た目は同じでも、理由はまったく違います。
勉強の始め方がわからない子に「早く勉強しなさい」と言っても、何から始めればよいかはわからないままです。
「勉強しなさい」と叱るのは逆効果なのか
親の叱り方についても、調査結果を見てみましょう。
同じ親子調査では、小学4〜6年生の保護者で「テストの成績が悪いとしかる」と答えた割合が、2019年の29.1%から2025年には25.2%へ、3.9ポイント減少していました。
少なくとも、この質問では叱る親が増えているわけではありません。
一方、ベネッセ教育総合研究所が2026年7月に公開した分析では、自分から勉強する子どものグループほど、努力を認めたり、本人の決定を尊重したりする親の関わりが多い傾向がみられました。反対に、叱るなどの管理的な関わりは少ない傾向でした。
ただし、これは調査で確認された関連性です。
叱ったから勉強しなくなったのか、勉強しないために叱ることが増えたのか、この結果だけでは判断できません。
「叱れば必ず逆効果」とも、「厳しく言えば勉強する」とも言い切れないのです。
ただ、本人が困っていることを知らないまま注意を繰り返しても、問題が解決するとは限りません。
叱る前に、家庭で確認したい5つのこと
勉強時間を増やそうとする前に、まずは次の5点を確かめてみてください。
- 宿題は終わっているか。宿題そのものが進まないのか、自主学習だけをしていないのかを分けて考えます。
- 勉強のやり方がわかっているか。「どこがわからない?」よりも「最初の1問はどうやって解く?」と聞く方が、つまずきを確かめやすいことがあります。
- 勉強する意味を感じているか。「何の役に立つの?」という疑問を、すぐに反抗だと決めつけないようにします。
- 疲れていないか。睡眠不足や学校での悩みなど、勉強以外に気になることがないか確認します。
- 自分で決められる部分があるか。取り組む教科や始める時間など、本人が選べる余地を作ります。

例えば「今日は算数と漢字、どちらから始める?」と聞いてみる。勉強することを一方的に命じるのではなく、取りかかり方を一緒に考える方法です。
もちろん、これで必ず勉強するようになるわけではありません。
大切なのは、勉強しない子どもを一律に叱るのではなく、何に困っているのかによって対応を変えることです。
勉強の内容がわからないなら、学校の先生に相談する。宿題は終わっているなら、自主学習をどこまで増やす必要があるのか親子で考える。疲れているなら、勉強時間より睡眠や休息を優先する場合もあります。
また、急に勉強しなくなった、学校に行きたがらない、気分の落ち込みや体調不良が続くといった場合は、単なる学習意欲の問題と決めつけないことも必要です。担任や養護教諭、スクールカウンセラーなどに相談できます。
子どもが机に向かわないと、親はどうしても将来が心配になります。
けれども、勉強時間を増やすことだけが最初の目標ではありません。
「どうしてやらないの?」と責める前に、「どこで困っているの?」と聞いてみる。そこから、親子でできることを探してもよいのではないでしょうか。
参考資料(2026年10月30日確認)
- 国立教育政策研究所「令和8年度 全国学力・学習状況調査」質問調査結果
質問調査報告書(PDF) - 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」
2026年6月30日公表の調査結果 - 同「子どもの生活と学びに関する親子調査2025」ダイジェスト版
調査報告書(PDF) - ベネッセ教育総合研究所「自律的な学習を促す保護者の関わりとは?」(2026年7月6日)
保護者の学習関与に関する分析 - 厚生労働省「こころもメンテしよう」
学校に相談する方法
※調査結果は回答者の自己申告に基づいています。異なる調査の割合をそのまま比較したり、個々の子どもの原因を数字だけで判断したりすることはできません。

